2024年3月16日土曜日

白文を見据えて英訳を考えないといけないか 早に發す白帝城(李白)を例に

早に發す白帝城(李白)は教科書に載っている有名な漢詩。
これの英語訳を以前考えたことがある。
明治時代の外交官の小畑氏が唐詩選の英語訳を著している。
それを元にいろいろ考えて自分でも英語訳を作った。
 

拙ブログ:李白「早発白帝城」を漢文と英語で理解を深めてみた(2022年7月2日)
 
この英訳で難しかったところは
「両岸(りょうがん)の猿声(えんせい)啼(な)いて住(や)まざるに」である。
 
五雲たなびく白帝城を朝早く発ち、長江を船で下り、江陵というところまで行く。
長江両岸に猿が鳴いているが、その声が収まるか、収まらないかのうちに、あっという間に、幾つもの山を後にした、という内容である。
 
ここで改めて 「両岸(りょうがん)の猿声(えんせい)啼(な)いて住(や)まざるに」
の、漢文を見ると・・・
特に、猿の鳴き声が止むか止まないかのうちに、とは言っていないのである。
「両岸(りょうがん)の猿声(えんせい)啼(な)いて住(や)まざる
である。 
 それでも十分に意味は伝わってくる。
 日本語であると、 「住(や)まざる」 に 「に」をつけるだけでそのような意味をきちんと表せるが、ここで、これを英語で言い表そうとすると、すごく難しい。
 as soon as を使うか、小原さんは
Had scarcely ceased echoing in my ear When my skiff had left behind  Ten thousand ranges of mountains 
という難しい文章を使っている。
 これも格調が高くて良いのだが、難しい。
 
 しかし、今回英語を直すときにこれはそのまま「両岸(りょうがん)の猿声(えんせい)啼(な)いて住(や)まざる」とした。
 すなわち 「両岸の猿の鳴き声が響き続けた」 として英訳をした。英文自体は随分と簡素なものとなるが、詩の意味は十分に伝わってくるだろう。
 




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